2024年08月号 第111話 自然が好きだ
自然が好きだ。自然の中に身を置くと“豊かさ”を感じることができる。雲の流れ、鳥の声、風の音、木々の音、花の香り、水の流れ、波の音・・・。その中に自分がいる。とてもちっぽけだ。自然は豊かさに満ち溢れている。眼前の世界に脳内が染まる。何も考えることはない。ただひたすら自然に呼吸をする。ちっぽけながらもつ殻強く鼓動する生命を感じる。
・・・なんて事を考えているかどうかわかりませんが、自然が好きで休日にはよく山や海へ行きます。登山、クライミング、スノーボード、サーフィン、サイクリング、キャンプ、そして写真(カメラ)などを趣味にしています。田舎をぶらぶらと散策しながら歩いたりドライブしたりするのもいいですね。
私は2024年5月にクリニックを開院いたしましたが、それ以前は脳神経外科として病院勤務していました。各科の先生方もご存知の通り、脳神経外科は数多くの診療科の中でも“ブラック度”ランキング上位であることは否めません。“休日”など知らないに等しい人種でしたが、それでも奇跡的に休日を得た時には逃げるように自然の中へ逃げ込みます。あまりにも山深すぎて病院PHSの電波も入りません!(←コレ大事) そして前述の通り、この上なく満ち満ちた気分に浸ります。大いなる自然を全身で感じながら目的地をめざし、時には360度パノラマの下界を見下ろしながら、またある時には落差100mもの滝を見上げながら、コーヒーを淹れる。あるいはたまには担いできたテントでも張り、アジトの中で昼寝でもしよう。そして鳥の声で目覚め、またコーヒーを一杯。とても贅沢な時間です。でもそろそろ下山しなければなりません。アジトを撤収し、満たされた気持ちで再び歩き出します。無事に車まで戻ってきました。エンジンをかけ自宅へと車を走らせる私は大切なことを思い出します。「あぁ、明日は予定手術時間10時間の開頭手術か・・・」 道中PHSの電波がしっかりと復活したことを確認した私は、再び戦場へと帰ります。
今ではクリニックを開院し、院長としてこれまで組織に所属していた時とは異なる責任を負う立場となりました。本稿を執筆している2024年7月現在、まだ開院間もなくいろいろと多忙な日々を送っており、ゆっくりと自然に身を置くことができていませんが、今後そうした時間を過ごすことができた時にはどのように感じることができるのでしょうか。たぶん、「やっぱり自然が好きだ」と感じるのかなと思っています。自然から受け取った豊かな心を糧に、今後も日々精進してまいりたいと思います。
谷本 匡浩(草津たにもと脳神経外科クリニック)