2024年07月号 110話 サンクコスト効果ってご存知ですか? 

5月に小児科クリニックを開院して以来、日々の診療に追われる中で、趣味のスポーツのテレビ観戦が毎日の癒しとなっている。数あるスポーツの中でも、小学生の頃にサッカーを経験し、二人の息子も小学生から高校までサッカーに打ち込んできたため、夫婦で応援に行くのがいつの間にか楽しみの一つとなっていた。今年はヨーロッパ選手権と南米選手権が開催されており、テレビ観戦が毎日の癒しとなっている。

サッカー観戦を楽しんでいる中で、ふと思うことがある。果たして、スター選手を集めればチームは強くなるのか?必ずしもそうではないらしい。その理由の一つに、「サンクコスト効果」という経済学の概念が影響しているという記事を読んだ。サンクコストとは、既に投入された費用や労力が回収不可能であるために、合理的な判断を阻害する要因となることを指す。サッカーにおいても、このサンクコスト効果が影響を与えるようだ。 

例えば、巨額の移籍金を払ってスター選手を獲得した場合、その選手を使わなければならないというプレッシャーが生じる。しかし、その選手がチームにうまくフィットしない場合、むしろチーム全体のパフォーマンスが低下することもあるのだ。スポーツにおけるサンクコストの研究では、野球のような個人プレーが中心のスポーツでは、スター選手の多さとチームの成績が比例することが多い。しかし、サッカーやバスケットボールのようにチームワークやコンビネーションが重要なスポーツでは、スター選手の数が成績に直結しない場合がある。これは、個々の能力だけでなく、その選手たちがどれだけうまく連携できるかが勝敗を分けるためだ。

この考えは、クリニック運営にも通じるものがあると感じる。クリニックという組織においても、スタッフ一人一人の能力は非常に重要だが、その組み合わせや連携がうまくいかなければ、良い結果を生み出すことは難しい。スタッフ全員が自分の役割を理解し、協力して働くことで初めて、患者さんに満足いただけるサービスを提供できる。逆に、個々の能力が高くても、チームワークが欠けていれば、クリニック全体のパフォーマンスは低下してしまう。

サッカーにおけるサンクコスト効果について知ることで、クリニックの運営にも新たな視点を持つことができた。特に、組織のメンバー構成やチームワークの重要性を再認識した。経済的な投資だけでなく、時間や労力という目に見えない投資も含めて、組織の運営においては合理的な判断をすることが求められる。そして、チーム全体としてのパフォーマンスを最大化するためには、メンバー全員が協力し、共通の目標に向かって努力することが不可欠だと感じた。

スポーツなどの異分野からも学ぶことは多く、その中で得た知識や経験を活かして、より良いクリニック運営ひいては人生を送るヒントを見つけていきたいと思う。

今村俊彦(あんようじこどもクリニック)