2024年02月号 第105話 息抜きはTORACO

昨年7月栗東市目川にたにがわクリニックを開業し、早くも7か月が経過いたしました。医師としてのキャリアは20年以上にわたりますが、新しい環境で数々の未経験の症例に携わり、慣れない業務に挑戦する中で、バタバタと忙しく過ごしてきました。あっという間の7か月でしたが、同時に充実感も感じています。

仕事に対するやりがいは十分にありますが、私は仕事を頑張るためには息抜きも欠かせないと考えています。そんな私の息抜きの一つは阪神タイガースへの熱狂です。昨年、念願のリーグ優勝と日本一を達成することができました。私は大阪生まれ、大阪育ちで、祖父から受け継いだ熱烈な阪神ファンの家庭で育ちました。子どもの頃から夕食時にはプロ野球中継が流れ、祖父が「アホか!」、「ピッチャー交代!」などとぼやいている光景が日常でした。甲子園球場に何度か連れて行ってもらった記憶がありますが、当時の成績を振り返れば、勝利の瞬間はあまりなかったのかも知れません。

最近ではお気に入りの選手の名前が入ったフェイスタオルを持って応援に行くのが楽しみの一つですが、小学生の頃はお気に入りの選手の下敷きを買ってもらって学校に行くのが誇らしかったものでした。当時の下敷きは手元に残っていませんが、私の「推し」はルーキーながら先発ローテーション入りし、1985年の日本一に貢献した背番号18の池田親興投手でした。

阪神タイガースはここ数年、Aクラスには入るもののリーグ優勝に届かず、ファンとしては歯がゆい思いをし続けてきました。そんな阪神ファンにとって、昨年は5月半ばから貯金を重ね、一時は首位を明け渡すこともありましたが、大きく崩れず、8月頃からは「A.R.E」を実現するのではないかと期待しつつも、これまで幾度となく期待を裏切られているため不安も捨てきれない日々を過ごしました。

夜診が終了すると、待合室のテレビでプロ野球中継を観ながら残っている仕事を仕上げるのが私のルーチンでした。無事に診療を終え、阪神タイガースがリードしていると知ったときは至福の瞬間です。9月14日は休診日で、念願の「A.R.E.」の瞬間をテレビで見届けることができました。9回表に巨人に1点差に迫られ、ヒヤヒヤしましたが、最後のバッターを内野フライに打ち取った瞬間、喜びながらも涙が溢れました。日本シリーズは第7戦までもつれましたが、結果的に日曜日にゆっくりと観戦でき、日本一の瞬間からセレモニーやビールかけまで堪能できました。

リーグ優勝のときも、日本一のときも大阪まで優勝セールに出かけました。日本一の優勝セールでは1時間近く並んで、阪神百貨店梅田本店限定の阪神タイガースモデルのお菓子を大量に購入し、優勝セールに来られなかった友人や両親にこの喜びをおすそ分けしました。

11月に入るとインフルエンザが大流行し、発熱外来はキャパシティーの限界を超えるような状態で、スタッフ全員がへとへとの状態でした。一度は優勝パレードの観覧を断念しようとも考えましたが、結局前日の夜診が終わると息抜きで新たなパワーをもらいに行こうという気持ちが優り、早起きして三宮まで優勝パレードを観に行きました。選手は見られなくても、パレードの雰囲気だけでも味わえればいいと期待せずに出かけましたが、実際は前から2列目を陣取ることができ、監督や選手ひとりひとりを間近に見られ、ハイテンションでパレードを楽しむことができました。ちなみに一緒にパレードに付き合ってくれた東京ヤクルトスワローズファンの夫も、予想以上に近距離で見られて楽しかったそうです。

既に新年が明け、阪神ファンとしても昨年のリーグ優勝、日本一の余韻に浸っているわけにはいきません。今年もリーグ優勝、日本一の連覇を達成してくれると信じて、暇を見つけて甲子園球場に足を運ぶべく、日程を調整中です。

「当たり前のことを当たり前にやる」、「普段通りに普通にやれば、結果がついてくる」。これは阪神タイガースの岡田彰布監督が、シーズンを通して幾度となく口にしてきた言葉です。昨年7月にたにがわクリニックを開院し、私はスタッフを束ねる立場として、この岡田監督の言葉は医療現場でも通じるものがあると考えています。さまざまな患者様が多種多様な主訴で受診し、時には忙しさが極限に達することもあります。想像もできないことが起きたり、緊急を要する状況に置かれたりこともあります。どんな場面でも各々のスタッフが各々のやるべきことを、“普通”にできるようになることが大切だと思います。まだまだ成長途中のクリニックではありますが、スタッフ全員が当たり前のことを当たり前にできるようになれば、結果は自然とついてくると信じ、スタッフ一同、精進していきます。

息抜きはTORACO

谷川 敬(たにがわクリニック)