2022年11月号 第90話 クリニックの蘭育

今年で開業して16年になります。毎年、3月から7月頃になると医院の窓口ではお世話している蘭が花をつけてくれるので、院長自身も楽しみにするとともに、患者様、職員の方にも喜んでもらっております。

植栽・鉢の手入れは開院時にさかのぼります。開院祝いに頂いたたくさんの蘭の鉢や植栽、花が終わってもかわいそうだから、医院で育ててみてはと家内に言われ、院長室や事務室などに置いてみました。院長室では冬の寒さに負けて凍死してしまいましたが、一方、事務室においた蘭の鉢は冬でも室温が保たれ、生き残り、春になると2輪、3輪、多いときは6輪くらいの花弁がつき、うれしくなって、受付けのカウンターに飾りました。

蘭は咲き始めから花が終わるまでの期間が約3カ月と極めて長く、月1回来院の患者様の目にもとまり、花心ある方にはお褒めの言葉をいただいております。そんなことが10年ばかり続いたあと、2018年の秋にある患者様が蘭の1鉢を持ち込んできました。先生の所なら世話してもらえるだろうと思い持ってきましたと。みるからに立派な鉢に大きな葉っぱを持った3株の寄せ植え、3本仕立てである(もちろん花は終わっていました)。この鉢をいただいても上手にお世話できるものかどうかと、戸惑ったものの、その生け花の先生(患者)から預かることになってしまいました。無事寒い冬を越して、翌年3月にはそれぞれの株から花芽が出て、どんどん伸びてきたのでビックリポン。4月には花弁と蕾が数個ついてきました。ゴールデンウィークがあけると、それぞれが大きな8-10輪の花弁をつけ、見るからに立派な3本仕立てに出来上がっていました。

鉢が大きいので診察室に飾っておきましたら「まさかここで育てたんではないですよね。」の言葉にはだんまり!!したり、最近では、「その..まさかのまさかですわ!」と言ってみたりです(笑)。美しい蘭の鉢に囲まれて、スタッフや患者様と記念撮影したこともあります。さて、蘭の栽培方法をみると、冬でも室温を15度以下にしないこととあります。わがクリニックの事務室は、レセコン本体が放つ熱と、冷蔵庫のモーターが放つ熱に温められ、常に15度以上になっているようです。あとは水遣り、土の追加などです。咲き終わった蘭の鉢をもらって、翌年、翌々年までは何とか見栄え良く咲くかせれますが、それ以後は、株の勢いや土、根に問題が生じてくるようで寂しい咲き方になります。

最近、YouTubeでプロの蘭栽培の方の動画をみたところ、1回咲かせた株の翌年は花芽が出たところで摘み取って、花を咲かさず、株を太らして養生するとのことでした。先生方も、忙しい日常診療のなか、さほど大掛かりなことをせずとも蘭の花が咲くかもしれません。試してみてください。

医師会からいただいたピンクの蘭
医師会からいただいたピンクの蘭
3本立ての白い蘭と以前からお世話していた小さな蘭
3本立ての白い蘭と以前からお世話していた小さな蘭

麻柄 達夫(まがらクリニック)