2022年06月号 第85話 コロナ禍
2022年5月末をもって、4年間の会長職をなんとか全うすることができました。皆様のご協力、ご支援のおかげと心より感謝申し上げます。4年前の就任時には予想もしませんでしたが、振り返ればほとんど新型コロナ対応に追われていたというのが実感です。こんなに長く流行が終息せず様々な制約が続いていようとは思ってもいませんでした。2020年の2月頃から様々な会議や集まりが軒並み中止かwebでの開催となり、東京オリンピックが延期され、3月には滋賀県でも初めてのコロナ感染者が報告されました。まず病院での入院、外来対応が始まり、2020年10月には地域の診療所でも診療検査医療機関として自院で検査ができるようになりました。草津・栗東でも多くの診療所で新型コロナのPCRや抗原定性検査が行われ、たくさんの感染者がでて、今も続いています。
2020年12月頃から新型コロナのワクチン接種の準備が始まり、草津栗東医師会では万が一の副反応に備えるための研修会なども行って、初めて経験するメッセンジャーRNAワクチンの接種に備えました。2021年4月から、草津市、栗東市ともにコロナワクチンの集団接種を、6月頃から各診療所での個別接種が始まりました。執筆時点では4回目のワクチン接種の準備をしています。当医師会では、地域の各病院の先生方にも全面的に協力していただき、集団接種会場に毎回救急スタッフを派遣していただいて、安心してワクチン接種ができる体制を作ることができました。草津市、栗東市の集団接種には診療科を問わずほぼすべての会員医師に出動していただき、多くの診療所で個別接種もしていただくことで、順調にワクチン接種が進んでいます。2021年8月頃からは自宅療養のコロナ患者が急増し、保健所業務がひっ迫し、地域の診療所でも自宅療養患者への対応を行っています。保健所や各病院との連携も密に行い、当地域では医療崩壊することなどなく現在に至っています。
思えば、2003年のSARS、2009年の新型インフルエンザ、2012年のMERS、そして今回のCOVID-19と、ここ20年新興感染症に翻弄され続けています。執筆時点、今後どうなるか分かりませんが、小児の原因不明の肝炎や、サル痘のことが新たに報道され始めています。そもそも医学は感染症との闘いを主戦場としていた時期が長くありましたが、抗生物質の開発や栄養状態、衛生環境の急速な改善により、特に先進国では感染症対策は一段落し、癌や生活習慣病、心臓血管疾患などへの取り組みが中心的なものとなっています。感染症専門医や感染対策の専門家は非常に少なく、新興感染症に対する備えも非常に手薄になっていたところを、まさに狙われ、襲われたというのが今回のコロナ禍と言えます。
まずは新型コロナとの折り合いをつけて、早く元通りの生活、社会に戻れることが大切ですが、今回日本や世界が翻弄され、大きな犠牲を払い、大混乱に陥ったコロナ禍を、国も地方自治体も我々医療者もしっかり総括して、次の新興感染症の襲撃には、もう少しうまく対応できるよう備えなければならないと思います。
中嶋 康彦(なかじま医院)