2022年05月号 第84話 メンタルヘルスについてのQ&A

私のクリニックに問い合わせの電話がよくあります。ご相談した内容で代表的なものは以下の通りです。

Q1 自分では気づかないけど、他人から見て分かる「うつ病」はありますか?自分で気づかない「うつ病」は軽症なのですか?

A1 当人が気づかない場合でも周囲のひとに「うつ病」が気づかれることはあります。それは重症な場合だけでなく軽症なうつ病でもあり得ます。本人は気づかないうちに色々なことで悩み、ひどく落ち込んでおられることがあります。

<周囲の人が気づく「うつ病」症状>

  • 暗い表情で笑顔がみられなくなる。
  • あまり食べなくなり、やせてきている。
  • あまり眠れていない様子。
  • 仕事や家事などをてきぱきとやれなくなっている。
  • 何ごとにも興味を示さなくなっている。
  • 周囲との交流が減ってきている。

また身体症状が前面に出てくる「うつ病」があります。それを「仮面うつ病」と言います。本人はうつ病とは気づかず内科的な病気(身体疾患)と思って内科を受診することがあります。このようなときには周囲の理解と指導が必要となってきます。

Q2 うつ病を早期に自覚できる場合はありますか? 周りが気づかない限り分かりにくいのですか?

A2 自分でうつ病になったかも知れないと早めに気づくことがあります。「よく眠れない」、「あまり食べたいと思えない」、「何をやっても楽しいと思えない」、「何もやる気がしない」などの症状が続けばうつ病を疑ってもよいと思われます。周囲に気づかれる前に、本人が先に気づくことはよくあります。早く専門医にかかってください。

Q3 どの程度の病状で専門医を受診すべきですか?

A3 症状が激しく、会社に出勤できない場合などには必ず精神科か心療内科を受診してください。しかし、ちょっとした異常(たとえば軽い不眠とか)に気付かれたとしても、普通の生活ができないと思われたら、遠慮されず受診してください。多くの病気は、早期に発見し素早く対応すれば比較的早く症状は改善します。

Q4 うつ状態の人と接するときに心掛けておかないことは?(一人にする時間を長くした方がよいのか。聞き役に徹しては会話にならないのでは。)

A4 うつ状態で悩んでおられる方に接するときは「傾聴の姿勢」が大切であります。聞くばかりでは会話になりませんが、本人にとって悩みを共有してもらえる人がいるというだけで心が和みます。また安易な気持ちで当人を指導したり、励ましたりしないことも大事なことです。

Q5 「コロナうつ」は従来のうつ病とどこが違うのですか?

A5 コロナ禍で通院中の患者さんで不安状態やうつ状態を示す方が多数おられます。特に女性の患者さんに多いようです。「コロナうつ」は非常事態宣言下に多数出現し、無力感、将来への絶望感(軽度)、自殺願望などの症状が認められましたが従来のうつ病より早く回復されます。ステイホームや在宅勤務と関係することが取りざたされています。

Q6 「昇進うつ病」はどんな病気?

A6 今は人事異動の時期ですが昇進される人もおられます。昇進はもちろん本人にとっても、また家族や友人にとっても嬉しいことです。しかし、喜んでばかりではおられません。それは「昇進うつ病」といううつ病があるためです。昇進には責任というものがついてきます。その重圧に負け、うつ病を発症する会社員や公務員の方がおられます。もともと几帳面で責任感の強い方に多いようです。昇進うつ病の方が家族のなかや職場におられたら速やかな対応が大切です。まず専門の医師(精神科か心療内科医)に躊躇せずにみてもらって下さい。お薬を服用して休養をとれば必ずもとの元気な状態にもどれます。仕事を休んだ方がよいときもあります。また職場サイドでできることも沢山あります。周囲の者は、本人に昇進で気負い過ぎないように注意してあげることも大事だと思います。また異動があった後3ヶ月間、上司や家族の者は本人とよくコミュニケーションをとり、よく見守ってあげてください。そうすることによって本人はきっとスムーズなスタートを切れると思います。

Q7 パニック障害ではどのような症状が起こりますか?

A7 パニック障害は不安障害(不安症)を代表するメンタル不調です。パニック障害でみられる一番の異常は「パニック発作」です。パニック発作は突然起こり、患者さんは激しい動悸、息苦しさ、めまい、「死ぬのでは」という恐怖感などの発作的な症状に圧倒されます。何回かパニック発作を繰り返しているうちに、「また同じような発作が起きたらどうしょう」というような予期不安が出現するようになります。患者さんは「二度と同じ恐怖を味わいたくない」と思い、パニック発作が起きたような場所や状況を怖がり避けるようになります(「広場恐怖」または「アゴラフォビア」といいます)。パニック発作では様々な症状が順次現われますが、症状の嵐は数分でクライマックスに達し、多くは30分以内に終わります。パニック発作が終わると、そのまま日常生活を続けられます。

Q8 うつ病になると薬を飲んで治すしかないのでしょうか? 薬以外に治す方法はないのでしょうか?

A8 うつ病の治療の基本は薬物(抗うつ薬が主)を使った療法です。それに加え、本人の内面的な問題を対象とする精神療法があります。このような治療が上手く行かないときに電気けいれん療法や電磁波を使う治療法があり、それ等は大きな専門病院で行われています。

Q9 現代人はメンタル面で弱いですか。

A9 答えにくい質問です。よく現代人はストレスに弱いと言われますが、ストレスの多い現在に50年前のひとを「タイムトンネル」か何かでつれて来られるとしたら、おそらくそのひとは上手く社会に適応できずストレスで発病しているでしょう。

佐藤 啓二(メープルクリニック)