2016年12月号 第21話 スポーツGO
平成28年を振り返ると、リオオリンピック・パラリンピックの記憶が新しい。鍛え抜かれたアスリートの活躍に興奮し、ハンディキャップを抱えながらも驚くほどの身体能力を発揮しスポーツを楽しむ姿に多くの感動を覚えました。競技を見ていると自分も同じように出来るのではないかと妄想し、運動しようという衝動にかられます。
スポーツ・運動することは健康にとても良いことです。メタボリックシンドロームを含めた循環器疾患や糖尿病などの内分泌代謝系の他に、腰痛・骨粗鬆症などの筋骨格系、認知症やメンタルヘルス不調など非常に広い範囲で好影響をもたらすことが知られています。
「運動しなさい」は、いわば万能処方といえます。
では、具体的にどれぐらいの運動量が必要なのでしょうか。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」によると、18~64歳では、23メッツ・時/週とあります。普通歩行が3メッツに相当しますので、少し強めの歩行を毎日60分、おおよそ1万歩といったところでしょうか。国際的には7.5メッツが推奨されていますが、解析時、日本人の身体活動量の平均がこれをすでに上回っており、日本人を対象とした科学的知見に照らし合わせて23メッツが採用されたようです。65歳以上では、強度に関わらず10メッツ・時/週です。どんな動きでもよいので、毎日40分程度ポケモンを探していればいいことになります。
運動にやりすぎはないのでしょうか。JAMA Intem Med 2015 に身体活動量と死亡率に関する研究レポートがあります。これによると、運動を全く行わない群に比べて、運動を行う群は全てにおいて死亡リスクの低減を認めており、ある程度までは運動量の増加とともに死亡リスクは低下していきます。22.5メッツ~75メッツの運動群で40%程度のリスク低下と最大の効果を示しています。これは日本の身体活動基準から3倍程度までの運動量に相当します。少し強めの歩行を毎日60分から180分、1万歩から3万歩ということになります。また、このレポートによりますと75メッツ以上のかなり激しい運動を行っている群でも30%程度の死亡リスク低下を認めています。すなわち、運動にやりすぎはないということになります。
運動は、いつでもどこでも始められるという利点もあります。早速私も、息子が琵琶湖一周に使用したロードバイクを引っ張り出し、いざ琵琶湖へ。爽快に走り出したものの、1時間ほどで臀部が痛くなり2時間もすれば腰と太ももが悲鳴を上げることに。運動という万能処方にも副作用があるようです。怪我です。高血圧や糖尿病など他の治療と同様に、強化療法はよろしくないようです。
10月にスポーツ庁から2015年度の体力・運動能力の結果が公表されました。65歳以上の体力が向上しており、これは1964年の東京オリンピックをきっかけにスポーツ・運動に親しんだ世代で、高齢になっても体を動かすことへのハードルが低く、再び運動に取り組む傾向が認められた結果だそうです。運動を始めるきっかけを見つけて、「今することが重要だ」と説明しています。
運動は、楽しく継続することが重要なのです。
「毎日運動 30分から60分 自己調整」継続可能な運動処方にし、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて体力向上・健康増進を目指して、さあ、 『スポーツGO!!』
草津栗東医師会 理事 山本 拓実(やまもとクリニック)