2016年11月号 第20話 大腸内視鏡検査はつらくない

大腸がん検診は、大腸癌の死亡率低下につながる有効な検診と位置づけられています。方法は便をスティックで少し取って出すだけと、非常に簡単なものです。2回採取して、2回とも陰性なら異常なし、1回でも血が混じっていたら、大腸内視鏡検査で精密検査をするのが標準的です。

この大腸内視鏡検査ですが、非常に苦しかった等、評判は芳しくないようです。しかし、これは多分に誤解されており、悪い評判が一人歩きしているように感じられます。確かに大腸内視鏡検査は準備が少しばかり手間がかかります。

私のクリニックでは検査前日の昼食から検査食に変更し、夜に下剤を飲んでいただきます。通常、検査当日朝までに何度か排便がありますが、これではまだ準備が不十分です。この後、腸管洗浄液2Lを2-3時間かけて飲んでいただきます。水のような排便になって、ようやく検査の準備ができあがります。私のクリニックでは平日午前の診察終了後、13時から2-3件の大腸内視鏡検査を行っています。検査はお尻から直径1cmほどの内視鏡を挿入して、病気がないか隈なく観察していきます。検査時間は約15-20分ほどです。内視鏡の挿入方法や内視鏡自体が以前より改良されており、耳にされる悪い評判ほど苦しくはありません。例え以前に検査を受けられ、非常に苦しい思いをされた方でも鎮静剤など適切に使用すれば、検査は楽に受けることができます。

大腸がん検診で陽性のために大腸内視鏡検査を施行しても、大腸癌が必ず見つかるわけではありません。むしろ見つかるほうが少ないです。一番多く見つかる病変は大腸ポリープです。大腸ポリープは大腸癌の原因となるものが多く、それほど大きなポリープでなければ、その検査時に切除できます。この様に大腸ポリープの段階で内視鏡的切除をしていけば大腸癌による死亡リスクを半減できるという論文もでています。

私には忘れる事ができない50代の男性患者さんがいます。大腸がん検診陽性のために当院で初めて大腸内視鏡検査を受けられましたが、幸い異常なしの結果でした。検査終了後、その方が男泣きされるのです。理由を尋ねたところ、「妻を大腸癌で亡くしました。随分前から血便があったのですが、検査が怖くて病院に行かなったのです。病院に受診した頃には手遅れでした。大腸内視鏡検査がこんな楽だと知っていたら、無理にでも早くに検査を受けさせたのに」

このような方がいなくなるように、大腸内視鏡検査を適切に行っていきたいと考えています。

栗東はた内科医院 畑 和憲