2021年09月号 第78話 繭

皆さん、大河ドラマ「青天を衝け」をご覧になっていますか?
主人公は、新一万円札の顔としても注目される「渋沢栄一」です。約500の企業を育て、約600の社会公共事業に関わった「日本資本主義の父」。ドラマは渋沢栄一の幼少時から詳しく描かれていて、とても親しみやすく私も子供と一緒に毎週楽しみにしています。栄一の実家は埼玉県深谷市血洗島の豪農で、養蚕や藍玉の製造販売を生業としており蚕が画面に写りました。演出としてCGで蚕が桑の葉の上で蚕ダンスをしていたのです。まず子供からの質問が「どうして家の中で虫を飼っているの?」でした。そこから蚕を飼ってみたいね、と話が進み、夏休みの自由研究も兼ねて飼育することにしました。

繭

ネットで検索すると四令からの蚕を通販で購入できるサイトを知り購入、一度脱皮をして五令になりそして蔟(マブシ)に入り営繭、収繭まで行いました。エサは桑の葉ではなく人工飼料です。本来虫は苦手ですが、蚕は可愛くて刺したり飛んだり噛んだりしませんので子供たちも怖がらず育てることができました。
収繭まで行くと一つ問題が出てきます。糸を取るということはそこで蚕の命を終わらせることになります。すべて成虫にしてあげたいと願う子供ですが、それでは糸が取れません。命の選択をするわけです。大切な蚕の命をどう扱うか、蚕は家畜と言われていますが人間のために蚕の命を頂くということを皆で話し合い、蚕に感謝とお別れを言いました。
糸取りをするのはまた大変でした。繭を鍋で煮て歯ブラシでこすり糸の断端を取り出し一つにまとめます。全長1500mほどあります。これが生糸で日本の近代化を支えたものです。当時の日本に思いを馳せながらひたすら糸巻きをしました(子供は途中で飽きていました)。
蚕の可愛さが忘れられずまた来年も蚕を飼育しようと家族で話しています。

那須準子(栗東なす耳鼻咽喉科)