2018年11月号 第44話 香川~滋賀に暮らして
私は香川県で生まれて育ちました。一度も訪れたことがなく、琵琶湖のイメージしかなかった滋賀県でしたが、ご縁あって結婚して滋賀に暮らすこととなりました。香川と滋賀の間にもご縁があるようで、草津市と香川県西部にある観音寺市は姉妹都市、彦根市と高松市は姉妹城都市ですし、三井寺を再興した智証大師は讃岐の出身です。また、どちらも災害の少ない気候に恵まれた所であるというのも似ています。
ただし、香川は降水量が少なく、大きな川や湖もないので、干ばつの被害がありました。そのため、古くから多くのため池が作られ、数は約1万5千個、全国で第3位ですが、県の総面積に対するため池の密度はダントツの1位となっています。私が小学生の頃には酷い干ばつがあり、水道をひねっても水が出ない、給水車にお水をもらいに行くなど、お水に苦労した記憶があります。
昭和49年に香川用水(吉野川上流の早明浦ダムの水を香川県に導く用水路)ができてからは、水不足の心配はかなり少なくなりましたが、滋賀に来て、大きな大きな琵琶湖を見たときは、本当に心強く思えました。災害が少なく、水の豊富な滋賀は恵まれたところだと思い、そこで暮らせることを幸せに感じています。
近年、香川県はうどん県ということで観光アピールをしています。うどんの消費量はもちろん全国1位で、県民にとっても気軽に美味しく安く食べられるものです。そのおかげか、香川のエンゲル係数は最も低くなっています。(うどん以外のものを食べても、物価が安いとは思っていましたが・・・少々驚きました。)食費が少なくてすむ上に、昔から命の源である水が尽きる恐怖にさらされてきた香川県民は、先に備えてためておく、という気質になったのかも知れません。所得額はそれ程高くないのに、貯蓄額のランキングでは常に上位にはいっています。・・・しかし残念ながら、私の家系には蓄える香川県民の気質が伝わっていなかった上、大きな琵琶湖の近くで暮らして、更に気持ちが大きくなったのか?貯蓄ということからは縁遠くなっております。
平成最後の11月11日。28回目の結婚記念日を迎え、滋賀での暮らしのほうが長くなり(足し算はしないでくださいね)、本当の意味で滋賀県民になれるような気がしています。香川県民の気質を深い記憶から呼び起こしつつ、暮らしやすい滋賀・草津の地で残りの人生を楽しんで生きたいと思っております。
井上佐知子(しづ井上内科)