2016年05月号 第14話 花供養

亡くなった方の霊を弔い供養をするだけでなく、人形供養とか針供養などといって、人以外の供養をする日本人の風習があります。使わなくなった道具などを供養する。ただ捨てるのでなく、供養をし、併せて、針仕事などの上達を祈願したとか。

私は最近お花を習っています。私たちの先生は自由花を中心に教えて下さるので、自由奔放に剣山に花材を突き刺して、自由に楽しみ、先生の手直しを経て、診療所の正面や薬局の受付に飾るお花を生けております。

私は、当初より、せっかく、枝が3本あるのなら、3本とも花器に納めて楽しみたいのですが、先生にかかると、この枝はいらんなと、はさみで無残に切り落とされることが必至で、少し淋しいもったいない思いをしながら、それをやってこその芸術としてのお花なのだろうと少しわかりかけてきたところです。先生の奥様とそんなお話をしていますと、「そうですよね。せっかく野で精一杯咲いている草花を人間の勝手で、その場所から取ってきたばかりか、その枝をちょんちょん切って、花にとっては迷惑な話ですよね。そうそう、花供養というのがあるらしいです。どこのお寺か詳しくは知らないけれど、花をお商売にしている方々が花の供養をするそうですよ。」日本人のよき風習は花の世界にもあるようです。

「そういえば、シロアリ駆除の業者さん方は、高野山で、シロアリの供養をするそうですよ。」シロアリ供養は、人間にとってのいわゆる害虫であるシロアリをちゃんと生き物として扱い、魂を弔う。(おそらく、そして商売の安全と成功を祈願しているのでしょう。)すかさず、私は、「私たちもインフルエンザウイルス供養をしないといけないかもしれませんね。」ウイルスも我々に熱を出させたり、鼻水を垂れさせたりする以外の意味があるのでしょうが、ただ、人間がそれを知らないだけかもしれません。医者自身の健康と、医院の商売(?)繁盛にウイルス供養?お寺にお参りには行きませんが、ウイルスに対してもその存在意義を思いやり、日々の診療に精進したいと思います。

花供養

草津栗東医師会 理事 木築 野百合(きづきクリニック)