2026年03月号 第127話 カテーテルアブレーションとの出会い
― 不整脈治療を通して、患者さんの生活の質の向上を目指して ―
動悸や息切れ、原因のはっきりしない疲れやすさ。こうした症状の背景に「不整脈」が隠れていることがあります。近年、不整脈の治療は大きく進歩しており、その代表的な治療法の一つが「カテーテルアブレーション」です。今回は、この治療との出会いと、不整脈診療に対する私の思いについてお話ししたいと思います。
はじめまして。草津ハートセンターの許 正翰(きょ しょうかん)と申します。私はこれまで宝塚、大阪、大津の医療機関で循環器診療に携わり、2023年より草津ハートセンターで勤務しております。現在は主に不整脈の診療を担当し、カテーテルアブレーションやペースメーカー留置術を中心とした治療を行っています。また、狭心症に対する冠動脈カテーテルインターベンションにも携わり、循環器疾患全般の診療に取り組んでいます。
私が循環器内科を志した当初は、冠動脈疾患の治療が中心でした。心筋梗塞や狭心症の患者さんに対して行う冠動脈インターベンションや、下肢動脈疾患に対するカテーテル治療など、血管を広げる治療に日々取り組んでいました。そのような中で興味を持つようになったのが、不整脈に対するカテーテルアブレーションという治療です。専攻医としての研修を終えた後、不整脈治療についてより深く学びたいと考え、大津の病院でアブレーション治療を中心とした診療に携わるようになりました。
カテーテルアブレーションとは、不整脈の原因となる心臓の電気信号の異常を根本的に治療する方法です。足の付け根(鼠径部)の大腿静脈から直径数ミリほどの細い管(カテーテル)を心臓まで進め、心臓内の電気の流れを詳しく調べます。そして、不整脈の原因となっている心筋の部分を特定し、高周波電流による熱エネルギーを用いてその部分を焼灼することで、不整脈が起こりにくい状態を作ります。
この治療の対象となる不整脈には、心房細動、発作性上室性頻拍、心室期外収縮、心室頻拍などがあります。薬による治療だけでは十分な効果が得られない場合や、薬の副作用が問題となる場合などに有効な選択肢となります。手術時間は不整脈の種類や治療内容によって異なりますが、一般的には2〜4時間程度です。体への負担も比較的少なく、入院期間も通常3〜4日程度と短期間で済むことが多いのが特徴です。近年は医療技術や機器の進歩により、治療の安全性や成功率も大きく向上しています。
不整脈の患者さんの中には、動悸や息切れ、倦怠感などの症状によって日常生活に不安や不便を感じておられる方も少なくありません。カテーテルアブレーションによって症状が改善し、「動悸がなくなって安心して生活できるようになった」「以前より活動的に過ごせるようになった」といったお言葉をいただくと、医師として大きなやりがいを感じます。一方で、カテーテルアブレーションはすべての患者さんで完全に不整脈が治るわけではなく、治療後に再発するケースも一定数存在します。また、不整脈という病気はまだすべてが解明されているわけではなく、現在も多くの研究や技術の進歩が続いている分野でもあります。だからこそ、患者さん一人ひとりの状態や生活背景を丁寧に考えながら、その方にとって最も適した治療を選択していくことが大切だと感じています。不整脈の治療を通して、患者さんの生活の質(QOL)を少しでも向上させるお手伝いができればと考え、日々の診療に取り組んでいます。
これからも知識と技術の研鑽を重ねながら、地域の皆さまに安心して医療を受けていただけるよう努めてまいります。不整脈の症状でお困りの方やご不安を感じておられる方は、どうぞお気軽にご相談ください。
許 正翰(草津ハートセンター)

