2016年08月号 第17話 キャリア社会と家庭が両立してこそ

ネットから初婚年齢に関するデータを拾ってみました。

⇒ http://www.garbagenews.net/archives/2013777.html

昭和56年の男女雇用機会均等法で、女性の総合職への門戸が開かれました。いわゆる「正社員」化への道です。これまでは、女性の平均初婚率は昭和30年代から大よそ24〜25歳と変化はわずかでしたのに、この前後の年度よりカーブがにわかに上昇し、平成4年に26歳を超え今や29.4歳という数値は、大きなマスで女性就労が定着した事も意味します。一定のキャリアを獲得してから、妊娠の希望は別として伴侶との暮らしを求める節目が30歳なのです。これもまた、30代前半までの女性がキャリアと家庭が両立しえていない現実を投影しています。遅きに失しましたが、第3次ベビーブームを起こすべき層は結局、大規模な出産層を形成せず、およそ25%に独身を含むアラフォー世代となりました。

ところで、妊婦検診で時に遭遇する光景ですが、妊娠28週を過ぎて内子宮口が開大し、子宮頸管長が25mm(基準は35mm〜40mm)を切ると、コルク栓を緩めたワイン瓶を逆さにしておくようなもので、やがて外子宮口の全開大となり前期破水の確率が高まります。この時、妊婦さんには切迫早産の診断で突然安静入院を告げますが、自身の産休前の欠勤届けも含め長子がいますと問題がおこります。

『誰がこの子の面倒をみるの? 』

ご主人も勤務や自営で現場の一線で働いている場合が通常です。5時からわが子をみるとしても保育園の送迎を含め、昼間は誰かに頼らないとなりません。 実家の母親や姑さんは遠方でしたり、祖父母の介護のため孫の面倒まで出来ません。何より彼女らが就労している場合も増えてきました。

結婚と出産を抑制しないためにも、社会性(キャリア)と育児(家庭)の両立のための方策は待ったなしになりました。どんなに受け入れ保育園を増やしたところで、子供は24時間延べ何人かの大人で数珠繋ぎして傍にいるフォロー体制が必要です。現実的に切迫早産の例だけでなく、ここを母親一人と保育園だけでギリギリ観ている所に家庭の疲労骨折の契機があります。

今回は所得面の話はしませんが、新しい家庭のあり方とは夫婦以外の第3者を交えた環境で循環社会を再構築することを私は提唱しています。子どもにとって家庭の存在が軽薄にならないように複数の大人が寄り添い、家庭への感謝や憧憬を学びとらないと、次の社会参加に興味を持ちません。18歳で選挙権をもらっても、新入社員で就労しても、社会性からかけ離れ、その若者に取ってはハードルの高い社会参加となります。そして、適合して次に家庭づくりを目指せますから、人口増のカギは今の家庭円満が単純ながら大きな意味をもつといえるでしょう。

草津栗東医師会 入江 賢治(入江産婦人科)