2016年06月号 第15話 最近思うこと
今回の医療改正で、少し思うことがある。当院で回復期リハビリテーション(以下、回リハ)を開設してから10年以上が経過した。まず、立ち上げに必要なことは専門職を集めることであった。すでにリハビリは行っていたが、セラピストは不足することは分かっていた。専門学校は県内には1校しかなく、大阪や関西圏からのUターンもあまり期待できなかった。そのため、可能な限り学校に伺い、経験者や卒業生を紹介してもらうように依頼した。
また、メディカルソーシャルワーカーも必要であったが、今ほど地域連携が進んでいなかったこともあり、人材的には十分ではなかった。そして何より大変なことは、職員全員の頭の切り替えが必要だった。一般病棟を全床回リハに変更したため、イメージがつかめない、何から始めてよいかわからない。多々、問題が噴出したことを記憶している。
何とか今日まで、病院をあげて回リハにも取り組んできた。医療改正のたびに翻弄されてきた病棟でもある。入院までの期間が短縮、在宅復帰率の見直し、診療報酬も減額されてきた。算定には人手と時間が更に必要となった。今回の改正では、アウトカムがより重要視された。回リハは在宅復帰を目指しているが、アウトカムをより強く求められたことは、すなわち運動能力の改善度が重要視されたということだ。運動能力の改善の見込がないと判断されれば、回リハへの入院を敬遠されるケースが増えるのではないかと危惧している。
また、介護保険を取得している維持期リハビリの患者さんは、今後通院リハビリが困難となる。かといって、介護保険での受け皿は確実に不足している。昨今、地域包括ケアシステムが進められているが、それには人材や費用がかかる。医療改正の影響はリハビリだけでなく、医療全体に悪影響を及ぼしているはずだが、国は本気で地域包括ケアシステムを進めるつもりがあるのかと疑問に思う。
草津栗東医師会 理事 遠藤 衛(南草津病院)