2016年03月号 第12話 緑内障点眼薬のお話

緑内障の治療を継続していく上で一番大切なことは、いかにして毎日きっちりと薬を点眼してもらうかにあると思います。緑内障点眼薬も他の医療技術と同様進化しており、優れた点眼薬がいくつもあります。ただ、きちんと点眼できてこそのお話です。

緑内障点眼薬は、プロスタグランジン製剤、βブロッカーのどちらかが第1選択薬となることが多いです。どちらかを点眼した上でもう少し眼圧を下げたい場合、たいていその他方の点眼薬が第2選択薬になります。最近ではこれらの配合剤がありますので、例えば第1選択薬としてプロスタグランジン製剤を用い、もう少し眼圧を下げたい場合には配合剤を処方します。どちらも1日1回の点眼で済むので、アドヒアランスはかなり向上していると思います。しかし、その配合剤を使ってもまださらに眼圧を下げたい場合、それ以降に使用する点眼薬は1日2回点眼する必要があります。ここからが厄介なのです。

緑内障手術の主流はトラベクレクトミーで、これはバイパスを作成し房水を結膜下に逃がします。房水と外界は結膜1枚だけで隔てられており非常に感染の危険性が増すので、若い働き盛りの人にはなかなか勧められません。そこで何とか最大で4種類の点眼をお願いしますが、働き盛りの人には4種類の点眼はかなり難しいと思います。

ひとつ点眼するともう結膜嚢は満杯で、5分ほど待って前の点眼薬が吸収されてから次の点眼薬を点眼します。4種類の点眼薬を点眼するには、これをあと2回続ける必要があります。1日1回だけなら、男の人は朝に、女性は夜に点眼した方がアドヒアランスは向上するらしいのですが、これ以外に3種類の1日2回点眼薬を必要とする場合、無責任な話ですが、自分ではとても不可能なことに思えます。いったいどの時間帯に点眼すれば忘れずに点眼できるのか、どう患者さんにお話したらいいのか、正直わかりません。
どなたかいい方法をお教えください。

草津栗東医師会 理事 中村 二郎(なかむら眼科)