2016年02月号 第11話 さらに不安が増すばかりか これからの日本

昨年末、12桁の番号(マイナンバー)が送られてきた。1通のみの書留で、我が家では開封することなく3週間ほど家内が大事に(?)しまっていた。

ちなみに小生は自分の番号はまだ見ていない。初めて目にしたのは、従業員の方のものだ。適用は今年からだが、源泉徴収のため昨年提出用から記載が求められ、間違いがないか確認した時である。税理士さんにはコピーを取り厳重に保管する方法もあるとのことだったが、何しろ初めてのことで従業員の方も望んでいそうにない(と小生が勝手に思ったわけだが)、何より、簡単に誰にもわからないように厳重に保管する義務があるという煩わしさを1年間猶予したくない、ととっさに考えたからだ。ただし、記載されたものも同様に保管義務があるのだが・・・。

マイナンバー法では、正当な理由なく特定個人情報のデータを第三者に提供した場合、4年以下の懲役または200万円以下の罰金を科すなど罰則規定も強化された。盗まれた場合はどうなるのだろうか。どうも保険が必要なようだ。

マイナンバー制度は住民票を有する国民が対象である(住民票のない日本人はどのくらいいるのだろう?現住所と住民票の一致しない人の受け取り不能の問題があちこちで出ているようだが、と要らぬ考えが浮かぶ)。

その目的は、

(1)行政の効率化

(2)国民の利便性の向上

(3)公平・公正な社会の実現

とうたわれている。

一般の個人のメリットは、

(1)役所の手続きの際、添付書類が減り、記載も簡素化される

(2)行政機関が持っている自分の情報を確認できる

(3)行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ることができる

ことらしい。行政機関や地方公共団体などで効率化がすすみ、無駄が削減される。負担を不当に免れることや、給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている方にきめ細かな支援を行うことができる、とされている。

言い換えれば本当に望まれるメリットは経費が減り、税などの収入が厳格化され、財政が健全化されることだと思われる。

しかし、その前に制度を構築するためにかかる費用は最大で5000億円、その後のシステム維持には300億円/年との試算がある。すでに明らかになっているものは、わずかである。中核システム「情報提供ネットワークシステム」は、NTTコミュニケーションズを代表とし、ほかにNTTデータと富士通、NEC、日立製作所が参加するコンソーシアムが落札した。

落札金額は税抜き114億円である(8%の消費税込みでは123億1200万円)と、個人向けのマイナンバーを生成する「番号生成システム」の落札金額が税込み68億9580万円程度であり、全体の経費を確認するのは相当な努力を要する。

少なくとも言えることは、費用を超える経費節減を継続できなかったら、財政は年々悪化することは間違いない。しかしネット上では、経験上、行政の今までの取り組みからはとても実現しそうにない と、心配というより確信されているようだ。

ただただ、適正な制度運用を願うしかないのは悲しいばかりである。

この原稿を書いていると、産業医先の会社から電話があった。

「源泉徴収のために小生の番号を次回訪問時に持参されたし」とのことであった。

役所からの提出依頼も思い出し、自分も番号で管理される身あることを改めて認識したところである。情報の漏洩から悪用される心配が氾濫しているが、セキュリティーサービスと保険の会社だけは直接恩恵にあずかることになるのは間違いない。これが景気向上につながるのだろうか。

とりあえず、今まで通り地道に本業に努めるしかないと思った仕事始めの2日目であった。

草津栗東医師会 理事 稗田弘一(ひえだ医院)