2021年04月号 第73話 しろしろくん
我が家ではウサギを飼っています。名前を「しろしろくん」といいます。2歳のオスのウサギで体が真っ白で、目が黒く、耳にグレーの色が入っています。
我が家で2羽目のウサギになります。先代は茶色のネザーランドドワーフのメスで、ペットショップから買ってきました。「うさこ」と名付けたのですが、それはもう活発な子でした。外に出たいと思えばケージの入り口の檻をガジガジ噛みだすし、外に出ればあちこちかじりまくり、捕まえようとしたら部屋中逃げ回る・・・なかなかのお転婆ぶりでした。
しかしそんな元気な「うさこ」にも寿命は来るもので、13歳を前に死んでしまいました。それからしばらくはウサギ不在で過ごしていたのですが、やはりウサギがいないと心が安らがないのでいろいろと探していました。
そんな時、妻が「ペットのおうち」という保護うさぎの里親募集のホームページを見つけました。保護ボランティアの方たちが捨てられたウサギを保護して、去勢・避妊手術をして里親のもとに送りだすという活動をされているとのことでした。
その中に目を引くような白いウサギを妻が見つけました。「しろしろくん」という名前で、紹介欄に「噛むクセがある」とは書かれてはいましたが、なかなか美しいイケメンな(?)ウサギのように思えました。
「こんなきれいなウサギならすぐ飼い主が見つかってしまうよ。」と言ってしばらくの間、様子を見ていましたが、なぜか誰も里親にならずそのままに1歳を過ぎるようになっていました。
「これは我が家に来る運命なのかもしれない。」と思って、妻がそのボランティアの方にメールで連絡して、そして審査を通って我が家のウサギになったわけです。
この「しろしろくん」はおっとりしているというか、わがままを言わないというか、臆病というか、昼間はケージの中で寝てばかりいます。ケージを開けても外に出て悪さはしません。しばらく辺りをうかがって、ひょいと外に出てあちこちを嗅ぎまわるだけです。もちろん噛んだりはしません。先代の「うさこ」の悪さを知っていましたので、なんておとなしいんだろう、しつけがされているのか、それとも遠慮しているのかなどと思っていました。
そんな「しろしろくん」は大麦の葉には目がないです。プランターに植えてある大麦の葉をちぎって持っていくと、口を突き出して奪うように葉を持っていきます。ただ、たまに足を投げ出してお腹を上にして半眼で寝ることがあるので、死んでしまったかと驚かされることがあります。
そんな「しろしろくん」は生まれるときから過酷でした。3年前の夏、近所の人からの通報があり、大阪の田んぼの真ん中で3羽のウサギが降りしきる雨の中、保護ボランティアの方たちに保護されました。その中の1羽のメスが身ごもっていました。そして次の日に台風が直撃して、保護施設が停電する中で4羽の子ウサギが生まれました。その1羽が「しろしろくん」です。もし通報が1日遅れていれば、生まれてきた「しろしろくん」たち子ウサギは、嵐の中で雨に濡れて低体温症で死んでいたかもしれません。
その時に保護された親ウサギも生まれた子ウサギもすべて里親のもとに行くことができたそうです。「しろしろくん」の親兄弟たち、他の保護ウサギたちが幸せに暮らしていくことを願わざるを得ません。
去年、滋賀県においてウサギの多頭飼育崩壊のニュースがありました。それはある家族がペットショップから8羽のウサギを購入して飼ったことから始まりました。避妊・去勢手術をせずに急激に数を増やして悲惨な状態になったようです。そこには牧草や糞尿が堆積し、悪臭が漂い、ウサギたちは栄養失調でやせ細ったり、病気や耳がちぎれたり眼球がつぶれたりとひどいけがをしていたそうです。また生まれた子ウサギもすぐに死んだようで死体や骨も散らばっていたとのことです。保護ボランティアの方たちがその過酷な現場にレスキューに入り、2日間かけて130羽、後から生まれた子ウサギを含めると180羽を保護されたそうです。
今もその保護ウサギの里親を募集されているそうです。もし関心のある方がいらっしゃるなら「ペットのおうち」を検索してみてください。
田澤隆広(びわこ皮フ科)