2021年03月号 第72話 雪の日に思う
雪の多い国といえば、皆さんどこを思い浮かべるでしょうか。緯度の高いヨーロッパ、北米が雪のイメージが強いですよね。ですが実はそんな寒そうな国々以上に、高温多湿と言われる日本のほうが雪国だということご存知ですか。
実は日本は世界でも有数の雪国。特に降雪地域にこんなに人口の多い都市があるのは世界的にもまれらしいです。豪雪地帯にある都市は世界中にいくつかありますが、日本の東北や北海道ほど人口は多くなく、雪国にこれほどたくさんの人が生活している地域はとても珍しいのです。
日本には『豪雪地帯対策特別措置法』という大雪が降る地域を支援するための法律がありますが、それによって「豪雪地帯」と指定されている地域の面積は、なんと国土の51%。つまり日本の半分以上は豪雪地帯なのです。そして、人が住んでいない場所も含めて地球上でもっとも多くの積雪が観測された場所が滋賀県と岐阜県にまたがる伊吹山であるのをご存知でしょうか。1927年に1182cmという世界最深の積雪が記録されています。
100年近くたった今でもこの記録は破られていません。日本は、実は世界でもトップクラスの雪国なのです。考えてみれば日本人にとって雪はとても身近な存在かもしれません。平安時代にはすでに雪合戦が行われていたといいますし、かまくらも日本由来の文化ですね。そして何よりウィンタースポーツは雪がなければ始まりません。冬季オリンピックも2度開催され、これまで多くのアスリートが活躍してきたのは、日本が雪国だからといえるでしょう。
私は生まれが新潟県妙高市で日本でも有数の豪雪地帯です。ここ数年間は昔に比べるとかなり減っているようです。昭和38年の豪雪が有名で昭和30〜40年代は現代よりはるかに雪が多かったのを覚えています。
滋賀県も雪の降る日は減っています。昔はスタッドレスタイヤの恩恵を受ける機会が年に2〜3回はあったように思うのですがここ数年はスタッドレス不要の日々が続いています。全国的に雪が減っている原因として真っ先に思い浮かぶのは地球温暖化の影響ではないでしょうか。確かに地球温暖化で平均気温が上がれば冬も気温が上がって雪が降らなくなると考えがちですが、気象学的には少し複雑なようで、全国的な雪は減少する一方で北海道や北陸では、災害を引き起こしかねない「ドカ雪」の回数が増えると予測されているそうです。地球温暖化で海水温が上昇して、大気中の水蒸気が増えることが主な原因で近年増加する夏季のゲリラ豪雨のように、一部の地域では冬季も危険な気象現象が起きかねないらしいです。
ここ数年台風や集中豪雨による大災害も増えていて、観測史上最大という言葉を繰り返し聞いている気がします。人類が自分たちによって引き起こした地球温暖化に対する自然の報復現象は歴史上かつて経験のない事態に向かっているようで、自然界が人類に発している警告と考えるのは私だけでしょうか。先日、少しだけ雪が降った日にそんなことを感じてしまいました。
小林 昌明(こばやし整形外科)