2020年06月号 第63話 「人生会議」その後のACPingについて
1.初めに
平成30年11月30日を「いい看取りの日」として厚労省が定めました。「いい看取り」を実現するために、「人生最終段階についてあらかじめ考えておきましょう」という考えを広めるために「人生会議」と愛称を付け、それを普及させる目的でポスターが作成されたとされています。それがお笑い芸人「小藪千豊」を使用した「人生会議」のポスターです。このポスターは物議をかもしました。
2.人生最終段階についてあらかじめ考えておきましょう
この考え方には2とおりあると思います。
(1)「未来ノート」として草津市はこれを啓発に努めています。これは「尊厳死」尊厳死協会、「ending note」「advance directive」に相当する考えからの作成物です。
Advance directive等は人生最終段階にご自身がなった時延命治療への思いを具体的に人工蘇生・人工呼吸装置・人工透析等は拒否するとの意思を表明しておく書面です。この書面はその時点での思いを記載したものであり、家族との話し合いがあったかどうかは関係ないものです。すなわち家族と協議して記載したものかは問題でなく、一個人がそれまでの思いを終末期になったら延命治療はしてほしくないとの希望を記載したものであります。
草津市作成「未来ノート」はもしもの時に遺族が困らないように元気な時から大切な持ち物等(実印・土地権利書・銀行等通帳等々)の置き場所を記載する欄があります。実際に困ったという話はよく聞きますので良いことと思います。
(2) 「人生会議」は「advance care planning」という意味の厚労省が付けたネーミングです。これはその人が将来認知症とかになり、適切な判断が出来なくなった時のために家族とか自分の後見人となる人とかかかりつけ医とかに将来の自分が尊厳のある生き方がしたいという思いを理解してもらい、人生最終段階になった時にご自身で判断できなくなった場合に、どのような治療・介護を希望しているのかを話しあっておくものです。また日々年々経過するうちに考え方が変化することもあります。その時はその都度「人生会議」を行うことが良いとされ、推奨されています。すなわち「planning」の形になっている由縁でしょう。
この「人生会議」を広く啓発するために、お笑い芸人「小藪千豊」を使用したポスターが作成されました。その制作費用が4070万円掛かったそうです。一部のがん患者の家族から意をくんでいないとの猛烈な批判を浴びて全国送付には至らなかった経緯があります。しかしそのポスター作製による効果は大きなインパクトになりそれなりの大きな効果が得られたと思います。また一番大切な啓蒙したいことが伝わり、よきにつれ悪しきにつれ「人生会議」の必要性を国民に示せたと思います。
繰り返しになりますが、「人生会議」は将来ご自身が今までどのように生きてきて今後どのように生きたいと考えているのか、希望しているのかということを理解してもらうためにご自身が判断ができなくなった時にご自身の思いを代弁してもらうことが目的になります。そうした思いを代弁していただければ、その人の人生が満足できることになるとの考えからです。
3.おわりに
実際に大切な人がお亡くなりになった時に、その家族とかがその人に尽くしたことが十分だったのかどうかとか、あのようにすればよかったとか、こうしておけばよかったとか後悔することが多々あるかと思います。このことは遺族の方からよく聞きます。そのような思いにならないためにも大切な人と「人生会議」を繰り返し行っておくと後悔するような思いはおそらく起こらないで安らかにお送りできるでしょう。ぜひ「人生会議」を積極的に行っておき後悔しないようにしましょう。いかがでしょうか。
草津栗東医師会 理事 大西 淳夫(大西医院)