2019年09月号 第54話 趣味ではないカメラのウンチク
「侃々諤々」などという難しいお題をいただいたので対抗して「蘊蓄」なるものをぶつけてみようと思います。まるで最近のクイズ番組の漢字テストのようになってしまいましたが内容はたわいもないこだわりと自慢です。しばしお付き合いください。
この仕事をしていると記録を取るために写真を撮る機会が多く、そのためかカメラや写真を趣味とする人も多くみられます。私は写真やカメラを趣味と言えるほどのこだわりはありませんが、カメラはいろいろ購入しました。のどの中を撮影する機会が増えてからあるカメラに出会い他のカメラを買わなくなりました。
カメラを使い始めたときはまだ35mmのフィルムカメラでした。影ができないようにリングライトを付けて撮影していました。そのうちデジタルカメラがでてきましたが35mmのフィルムカメラにこだわる人も多かったと記憶しています。当時はフィルムカメラからデジタルカメラに移行する時期でまだデジタルカメラの画質が低く、Nikon F2というフィルムカメラの名機を信奉する人たちがいました。F2はボディが頑丈に作られており劣悪な環境でも壊れないという定評でプロのカメラマンがよく使っておりました。
フィルムカメラからデジタルカメラに踏み出せなかった人たちを納得させるためにNikonはF2と同じようにボディをアルミダイキャストで作った頑丈なデジタルカメラを世に送りました。これがCOOLPIX 950 です。COOLPIX 950 は堅牢なボディを信仰していたNikonファンを納得させました。ボディの頑丈さだけでなく画像の表現にも力を注いだようです。専門家ではありませんが、雑誌の記事を見ていると赤色の表現が他社に比べ自然な感じでした。
当時愛読していたコンピューターの雑誌でも長期間にわたり一押しのデジタルカメラにランクキングされていました。CCDの大きさも評価の一つであったと覚えています。うまく説明できませんが、CCDが大きいと大きな紙に絵を描くようなもので小さな紙に書いたときより画質が良くなります。ここで特徴をまとめると大きなCCDを使い自然な赤色を表現でき、一眼レフカメラのように堅牢なボディを持つデジカメで、フィルムカメラからデジタルカメラにNikonのユーザーを動かした名機です。
私の仕事でも色が忠実ということは重要でした。また、接写ができて1cmの距離でも撮れる、中央と周辺の画像の間に歪が少ないということも優れた点でした。画素数は200万画素で画素数は多くありませんが今でも使用に耐えます。逆に画素数が少ないためデータの容量が少なくて済むという利点もあります。望遠レンズ、広角レンズ、魚眼レンズなどのレンズ類やテレコンバーターなども豊富に用意されていました。これもフィルムカメラからの移行を意識したものだったのでしょう。
COOLPIX 950の最大の利点はリングライトにあります。普通のストロボはシャッターを切ったときだけに光りますが、COOLPIX950のリングライトはスイッチを入れるとLEDが点灯して、シャッターと無関係に常時点灯します。口の中を撮るとき困るのは、のどの奥が暗くてピントが合わせにくい上に、ストロボの光が顔に当たると口の中が暗く写ってしまうことです。COOLPIXのリングライトはストロボの常識を破るものでした。
私がCOOLPIX 950をはじめて購入したときは既に発売が終了しており中古で購入いたしました。当時の値段で新品が10万円しておりましたので中古でも6万円くらいでした。現在使用中のCOOLPIX 950は2台目です。その後部品取りのためのジャンク品を含めて7、8台のCOOLPIX 950を購入しリングライトも5、6個購入しました(あと何十年かは困らないでしょう)。後継機種のCOOLPIX 4500も購入しましたが画素数が増えてもCCDが小さくなったためでしょうか、COOLPIX 950の方が自然な色調に見えます。最近は日常の写真はスマホでパシャパシャと撮っておりますが、仕事ではこのCOOLPIX 950に信頼を置いています。
バッテリーが単3電池4本という点もいつでも手に入るというところが優れています。現在のデジタルカメラは画素数も多く便利な機能が多数備わっており、画質も向上しています。しかし、デジタルカメラ初期の頃にこれほど品質の良いカメラを作るとは今でも感心します。最近になってNikonのリングライトと同様の発想のリングライトが第一医科という耳鼻咽喉科の機械メーカーから発売されました。このような商品はニーズがありますのでこれからも残っていってほしいと考えています。
私の気に入っているカメラを紹介させていただきました。蘊蓄(ウンチク)にお付き合いいただきありがとうございました。
駒田一朗(みみ・はな・いびき耳鼻咽喉科こまクリニック)