2019年08月号 第53話 湖北町のオオワシ

最近、趣味を聞かれると『バードウォッチング』と答えています。以前から興味は有ったのですが、なかなか時間が取れずにいたところ、散歩途中の公園で、コゲラのドラミング(キツツキの仲間が高速で木をつつくこと)を見たことで更に興味が増し、バードウォッチングを始めました。湖北町でオオワシを見てからは、すっかり魅了されてしまい、最近では時間が有れば毎週のように各地へ出かけています。
歩きながら野鳥を探しますので、四季折々の草花や昆虫などにも出会えますし、メタボ対策にも一役買ってくれます。

コゲラと青紅葉
コゲラと青紅葉

滋賀県北部の湖北町には、20数年連続で毎年11月下旬頃に一羽のオオワシが飛来します。『山本山のおばあちゃん』の愛称で親しまれ、地元でもとても有名です。オオワシは極東地域だけに分布する貴重なワシで、国の天然記念物です。日本で最大の猛禽類で両翼を広げると220~250cmにもなります。オホーツク海沿岸、カムチャッカ半島、サハリン北部で繁殖し、越冬のために北海道や北日本を中心に飛来します。湖北町の山本山はオオワシの飛来地の南限だそうです。地球温暖化が進むと、もう飛来しないのではと心配です。
大自然を背景に飛翔するオオワシの姿は圧巻で、自然の偉大さ、自然の大切さに改めて気づかされます。

山本山から飛び立つオオワシ
山本山から飛び立つオオワシ

幼少時、田舎の自然の中で育った私は、宿題そっちのけで、野山、川などを駆け巡り、昆虫採集や植物採集、魚とりなどに明け暮れました。夏休みの後半に鳴き出すヒグラシの声はどことなく寂し気で、その声を聞くと、何故か手つかずの宿題を思い出してしまい憂鬱な気分になったものです。喉が渇けば山水を飲み、お腹が空けば野イチゴや桑の実、イタドリなどがおやつでした。学校にプールは有りましたが、川で泳ぐ方が格段に楽しかったです。透き通った水の中を泳ぐ婚姻色のオイカワは特に美しく、今でも脳裏に鮮明に焼き付いています。
幼少時、そこかしこに有った多くの自然と無意識のうちに接することができ、そこから得たものは一生の財産となりました。

青空を悠々と飛翔するオオワシ
青空を悠々と飛翔するオオワシ

自然から学ぶことはとても大切で有意義だと感じます。しかし最近の子供たちは自然に接する機会が少ないと言われています。
一方で、2020年から小学生にコンピューターのプログラミング教育が必修化されるそうです。学習塾でもプログラミング教育の講座を既に取り入れているようです。時代の流れと言ってしまえばそれまでですし、プログラミング教育に反対するつもりは有りませんが、例えば、『オオワシを観察する方が、深い意味で大切なのでは』などと考えるのは、私だけでしょうか。
将来、私に孫ができたら、自分の子供ともそうした様に、孫と一緒に自然観察を楽しもうと考えています。誘ったときに『おじいちゃん、今日はプログラミングの塾やし~。』などと言われやしないかと心配ですが・・・。

誰にでも幼少時などに、貴重な体験をし、感動して胸が高鳴った思い出が有ると思います。バードウォッチングでお目当ての野鳥を見つけた時、私は、幼少時に珍しくて大好きな昆虫などを見つけた時と同じような胸の高鳴りを覚えます。
皆さんも、携帯電話やコンピューターなどから目を離して、幼少時を思い出しながら、バードウォッチングいかがですか。楽しいですよ。

中野克哉(なかの医院)