2017年11月号 第32話 扁桃体をモニターする

企業のストレスチエックが義務化されるなど、ストレスが現代人に与える影響が正当に評価されるようになりました。ストレスの情報を処理しているのが側頭葉内側の奥にある扁桃体(Amygdala:ラテン語でアーモンドという意味)です。扁桃体は、もともと、蛇など害のあるものを見た時、後頭葉の視覚野でそれと認識する前に、不安、恐怖感を感じさせ、逃避を有利にする役割を果たしてきました。蛇の苦手な私も経験がありますが、恐怖感とともに、動悸、胸の圧迫感、冷や汗を伴います。これは、扁桃体の興奮が交感神経の活性化、あるいはコルチゾール、アドレナリンなどストレスホルモンの分泌を引き起こすからです。

扁桃体をモニターする

現代人のストレスは、古代人のものとは全く質を異にしています。直接生命には関係ありませんが、生活のいたるところでストレスが発生するようになりました。特に医師のストレスは大きいものがあります。決められたルールの中で、患者様中心の医療、安全で確実な検査、迅速で正確な診断、最適な治療、No refusal policy、在宅医療、最高医学レベルの確認などを求められ、連続的に複数のストレスが重なります(キラーストレス)。常に交感神経、ストレスホルモンが活性化され、心血管疾患、うつ病、年寄り化、その他の疾患発生の引き金を引くことになるのです。ストレス対策としてアメリカ心理学会は次の5項目を勧めています。「ストレスの原因を避ける」、「運動」、「笑う」、「サポートを得る」、「マインドフルネス(心の瞑想)」。マインドフルネスはヨガ、座禅と相通じるものがあり、ストレスの多い人に見られるマインドワンダリング(心の迷走)を減らす効果もあります。他に、コーピングなどの方法もありますが、その中には、「旅行に行く」、「音楽を聴く」、「ゴルフをする」などといった無難な項目もありますが、「美味しいものを食べる」、「アルコールを飲む」などメタボ、アルコール依存症になってしまう項目もあり, 慎重に選択すべきです。

心拍変動解析から交感神経活性・高ストレス状態を推測する方法が知られています。最近、これを応用したスマホアプリ「ストレススキャン」を発見、綺麗な脈波も気に入り、使い始めました。間接的に扁桃体の活性をモニターすることにもなり、なんとかストレス指数を低くする方法を模索しています。頭の中でいろいろ妄想したり、ぼっとしたり、座禅、マインドフルネスの真似事をしたりしてスキャンしていますが、一定の効果が出ていません。元来、マインドワンダリング気味の自分なので、諦めの境地に入っています。

佐伯満男(九谷医院)