2017年09月号 第30話 ○○○ファーストより三方よし

昨年の東京都知事選挙において、小池候補(現東京都知事)が「都民first」をキャッチフレーズにして当選されました。本年7月初めに行われた東京都議会選挙においても、小池知事を中心とする地方政党の「都民ファーストの会」の圧勝となりました。他にも、「アメリカfirst」を連呼する米国大統領をはじめ、〇〇ファーストとは、優先順位を行動や考え方の中心にする主義主張のようであります。

これを医療の世界に置き換えてみるとどうでしょうか。患者さんファーストと書くべきなのか?考えてみました。人の命が最も大切なのは当然ですが、患者さんが必要な医療を受けるためには、医療提供者である専門の人材が不可欠であり、自負を持って生き生きと働くことのできる環境が重要です。また医療を提供する場として病院や診療所等の円滑な運営も重要です。さらに、安心して医療や介護を受けることのできるように、国の社会保障制度が無ければ、日本の医療そのものが成り立ちません。よって、近江商人で有名な「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)の考え方を医療・介護・福祉にも取り入れ、それぞれの立場にある者の連携と相互理解を深めて、よりよい医療や介護が行われるよう、願ってやみません。

滋賀県には、患者さんの診療情報を病院と診療所が共有することができる「びわ湖メディカルネット」があります。また、在宅医療・介護を受けておられる患者さんの情報を医師や訪問看護師、薬剤師、介護関係者などの多職種において共有するための「淡海あさがおネット」も利用されています。日本は2025年に国民の4人に1人が75歳以上という超高齢化社会に突入すると予測されており、今後の地域医療連携を進めていくためには、インターネットを用いた医療情報等のネットワーク化が大変重要であり、国のほうでもこのような事業に力を入れております。

①行政からの支援、②医療機関におけるシステムの利活用、③患者さんには情報登録への賛同を、ぜひともよろしくお願い申し上げ、これぞ滋賀の「三方よし」として全国のモデルとなり、誰もが安心して住み慣れた地域で生活できるような社会の基盤づくりにも貢献できる、医療情報等ネットワークのシステムをさらに発展・充実させていくよう、運営する団体として取り組む所存です。

滋賀県医師会 会長 猪飼 剛(若草診療所)