2017年03月号 第24話 キッパリ!

決して勤勉でも向上心が強いわけでもない私だが、毎年お正月になると、今年こそ「自分のなりたい自分になる!」と、心に誓う。だが、「自分のなりたい自分」になれた年はない。

数年前、書店で「キッパリ!」という表題の本が目に入った。表紙には天高くコブシを突き上げるポーズをしたイラストが描かれている。手に取ると、たった5分で自分を変える方法という魅力的な副題もついている。だらだら地獄を抜け出すには?脚に力を入れて、天高くコブシを突き上げるといいと書かれていた。本当かなと思って、実際にやってみた。不思議なことに確かに体に力が湧いてくる。本の解説によると、このポーズは、いわゆる「ウルトラマンの変身ポーズ」、もしくは「エイエイオー!」の「オー」のポーズで、これから戦うというシチュエーションのポーズだそうだ。なるほど!と、妙に納得して、元気が出ないときは時々この技を使わせてもらっている。コブシを天高くあげられない時は、その場でギュッとコブシを握る。それだけでも体に力が入る。仕事の時は、たまに、密かにこの技を使って、元気な先生を装う。

よーし!この調子で家事もサクサクこなして、家の中をピカピカにして、自分の時間も充実させてと勢い込む。ところが、気が付くとテレビの前にボーっと座って、録画しておいたドラマを見て、だらだら地獄にどっぷりと浸かっている。そっとコブシを天高く上げてみるが、あんまり体に力が入らない。私生活となると、「まあ、いいか」という、ものぐさな根性が頭をもたげる。先日、耳鼻科の学会で、めまいと付き合うには「ジャマイカ療法」つまり、「じゃあ、まあ、いいか」という考え方も大事だと聞いたな、じゃあ、まあ、いいかと思ってしまう。ああ、ものぐさな私が、キッパリと、だらだら地獄から抜け出すもっと強力な方法、誰か、教えて!!

草津栗東医師会 理事 中西 佳寿子(おがき耳鼻咽喉科)